再開した

コロナだのなんだの、色々あって中断していた家探しを再開した。

 

一応建売も探してみていて、不動産屋さんに「2階のリビング、どう思いますか?」と聞かれ「1階の方がいいです」と答えたところ勢いこんで「そうですよね!」と返された。

個人的に少なくない頻度で食料を2階に運ぶ腕力と手間を思うと1階のほうがいいと考えている。

不動産屋がどう思っているかは不明だが、流行っているけど必要ないですよね?というテンションだった。

 

「絶対に譲れない条件はなんですか?」と聞かれ「地盤」と答えたら笑われた。珍しいのかもしれない。

でも自分の家の基礎をいくら固めても、いざというとき道路がグチャグチャだったりご近所が倒壊していたらと思うと、長く住むことを考えると大事だと思う。

賃貸でよかったと思うとき

台風が来た。

裏の家の屋根が飛んだ。

 

飛来物として家にぶつかって、どんと存在感を示す屋根と吹きすさぶ風に煽られている音の恐怖と言ったらなかった。

幸い怪我人も出ずに屋根が丸ごと飛んだだけですんだものの、問題は撤去だった。

 

自然災害による飛来物の撤去は原則物が落ちた場所の所有者が行う。可能であれば家の持ち主に費用を請求したりする場合もあるらしい。

今回は屋根の持ち主は明らかなものの、自然災害なので負担はしないという主張だった。

こんなとき持ち家だったらと思うと、結構悩ましい。

今は賃貸なので管理会社が根回しをしてくれて無事に屋根は撤去された。

 

今回の台風で持ち家はもう古い考え方だという主張を見かけた。

私はというと収納のたくさんあるかっこいい家に住みたいという気持ちは変わらない。

 

ただなんだか忙しくて土地探しもまだ途中の段階。まだまだ時間はかかりそうだ。

工務店?

次に会うことになった工務店は意図して小規模な工務店を選んだわけではなかったけど、よく確認すると親方と息子と娘婿、三人だけの会社だった。

対応してくれたのは親方と一級建築士の娘婿(以降お兄さんと呼ぶ)だ。義理の親子ながら仕事上は長い付き合いのようで、親方が言ったことにたいして遠慮なく間違いを指摘できる親子関係には好感が持てた。

 

お兄さんは穏やかな語り口で写真を交えながら今までつくった家の施主の要望とどうしてこうしたのかという説明をした。

以前話をした建築家のおじさんはどんな難しいことをしたか、自分のアイディアや技術についてだったのにたいして、お兄さんは施主の希望にたいする応え方の説明だった。

 

夫の仕事の関係で急な約束だったにも関わらず専用の資料も作成してくれていた。

話したのは1時間半くらいの時間だったにも関わらず、「この人たちにお願いしたいなぁ」という気持ちになっていた。

 

お兄さんの設計する家はかっこよくて、挑戦的なデザインでもあった。その中でも施主に寄り添おうという意図も感じられた。

 

それでも問題点が全くないわけではなかった。

基本的に(ハウスメーカーに比べると)大幅なコストカットは難しいこと。打ち合わせに通うには少し遠いこと(お兄さんはこちらに出向くこともできると言ってくれたけど、どちらにしても労力を使う)

 

「お話して、模型を作ってお見せするところまでやらせて頂いて、もしそれであわないと思ったら断って頂いてもいいです。出来ればそこまでやらせて頂けたら…」とお兄さんは言った。

 

是非お願いしたいと思った。

とはいえ、もう一件建築事務所の話を聞くことになっていた。現在進行形の話なのでどうなるかはまだ分からない。

どうする?

おじさん(建築家)に「収納がたくさんほしい」と言った時に言われた「普通だね」という言葉が頭に蘇る。

いくつかのブログを読んで分かってはいた。建築家と名乗って仕事をしている人はアーティストだ。気が合うアーティストが見つかれば最高なのだが……

 

このあたりで3回くらいは諦めようかとぼんやり思った。考えることが多すぎる。

土地の広さは、価格は、場所は、不動産屋のこと、ローンのこと、家のローンは建物が出来てから開始になるので土地を買うためのつなぎ融資のこと、税金のこと、建築をどこに依頼するか、間取りはどうしたいか。当たり前だけど建売を買うよりも考えることが圧倒的に増えるのだ。

夫は特にこだわりがないのでよく分からないと言った。だから私の心が折れたら家探しどころか引っ越しさえなくなる可能性がある。

 

ところで建築家に支払う金額は全体の工事料の10%〜というのが多い。

10%の場合3000万円の建物なら(建築家に依頼する場合はここらが最低ライン)そのうちの300万円が建築家に払われる。決して高い金額ではないと思う。経験値が高く、責任を持って竣工まで管理してくれるという点と、凡人には思いもよらない提案が出来るという点は魅力的だと思う。

家を建てた友人の知り合いも建築家に頼んだという人がいて、いわく「気が合わない建築家は時間の無駄」だそうだ。

気が合う建築家や工務店を探す、確かにこれは重要だと思う。

 

問題は近隣でお願い出来るところが見つけられるかという点だった。家が建つまで何度も打ち合せをするので通える距離じゃないと大変だ。

 

不動産屋では「建物の価値は時間が経てば必ず下がる。不要になった時に売却することを考えると土地の立地が全てです」と言われた。建築家のおじさんは「不動産屋は高い土地を売りたいからそう言うけど、価値のある建物のためお金をかけるべきだ」と言う。お金が潤沢にあればどちらも叶うけど、限られた予算内で建築家に依頼することに価値があるものかどうかは慎重に検討した方がいい。

 

工務店に依頼する場合は建築家に支払う設計料300万円分を土地代か建築費に当てられる。300万円あれば設備費としてはかなり助かる。他の人の例を見ると最終的には予算をオーバーしがちで、10万円20万円の設備の減額調整はよくあることだ。

 

何通か工務店から資料も届いていた。

自然素材にこだわる工務店や、ナチュラルカントリーテイストの工務店など。資料の作りは色々で、家庭用のインクジェットプリンタでプリントした紙資料や、家ごとに小冊子を作っている工務店、こだわりの床材のサンプル(!)が同封されている工務店もあった。

どれもしっかりとした家の写真ばかりだったけど「これだ!」という決め手にはならなかったのでとりあえず話だけでも聞いてみようと考えていた。

(物件Aの工務店にも問い合わせてみたけど、建売で手一杯なので注文住宅は受け付けていないとの事だった)

他の建築家から資料も届いていた。こちらは蝋で封がしてあって雰囲気が素敵だったけど、新幹線に乗らないと会いに行けない。

 

資料の送付ではなくメールの返信のみの工務店があった。ここはサイトに資料請求のフォームがなかったので、耐震等級に関する質問だけ送っていたのだ。工務店にしては珍しく思い切った作風で型にハマらない施工例は社内の一級建築士のこだわりを感じさせた。

難点は少し遠い。車で1時間半はかかる。

 

とりあえず会って話だけでもしてみようと思った。

建築家?

初めて会いに行ったのは建築家だった。なぜいきなり建築家? と思うだろう。

ハウスメーカーは初めから頭になかった。建売を何軒か見て感じた「よくある感じ」はあまり好きではなかったからだ。賃貸物権に似た汎用性の高さは大勢の人に対応出来る形なんだろう。でも自由度には制約がある。

だからこの段階では建築家と工務店への資料請求を並行していた。

 

工務店はプレゼン用資料があり自宅に送付、後に打ち合せという形が多く、建築家は直接会って話すのが第一段階の人が多い。(建築家の中でも資料を先に送ってくれる人もいた)

だから同時進行していると必然的に建築家の方が会いましょう、となるのが早い。

メールのレスポンスが早かった一人の建築家は数日後にはもう会うことになった。

 

建築家と言っても様々で、施主の要望を形にすることを目指している建築家や、自分の作品のように考えている建築家もいる。

 

建築家に依頼した人のブログを何人か読んだけど、施主と意気投合して盛り上がる建築家もいれば、説明なく見栄えのために使い勝手を犠牲にした建築家もいた。

工務店は検索をかければ評判はある程度分かるけど、建築家は表のプロフィール以外は会ってみるまでどんな人かは分からない。

なぜ問い合わせたかというと、県内で好きなテイストの家を作っていたからだった。

 

その建築家(以降「おじさん」と呼ぶことにする)は会ってすぐに住んでいる場所やどこでこの設計所を知ったか簡単な質問をしたあと、自分が受けた仕事のこだわった点、知り合いの建築家がいかに有名人を手がけたかを話した。

おじさん自身は芸能人や有名人のお金持ち相手の仕事はつまらないのでしたくないそうだ。

 

知人が施工したという有名人や、かつて担当した施主のエピソードは家の話だけに留まらず、センスのなさや食べているものにまで至った。大手ハウスメーカーの名前を出してダメだと言う。

多くの人たちはこういう話を聞いて楽しめるのだろうか? 依頼をしたらそのうち同列に語られてしまうかもしれないと思うと、気持ちのいいものではなかった。

 

一段落すると「どんなのがいいとかあるの?」と聞いてきた。メールのやり取りの内容は他の人と混ざっていて把握出来ていなかった。

こちらの意見を聞いて一言目には「普通だね。もっとないの?」と言う。品定めするような目だ。「面白くない仕事はしたくない」と言っていたのが頭をよぎる。

 

『建築家のセンスや経験をお借りして理想の家を建てる』というよりは『面白いアイディアを提供して作品に住まわせてもらう』というニュアンスだ。

 

「建売を買った人の『衣食住』の『住』の喜びはゼロだ。食や衣や趣味に生きればいい」

そう語る姿は自分の作品への自信の高さがうかがえた。

 

「要望は5つまで聞く」「芸能人や金持ちの仕事は面白くない」「安い仕事でもやる」「そのかわりテレビで紹介させてもらう」「無料で広告がわりになる」「みんな喜んでますよ」「おしゃれに暮らしてほしい」「ニ◯リの家具なんかは使わないでほしい」「掃除機はダイソンかルンバしか使ってほしくない」「ここの施主は住みこなせていない」

その言葉は裏を返せば自分が主導権を握れない相手とは仕事をしたくないのだろうし、施主の承認欲求と大金持ちではないところを利用して広告としての生活を求めているように見えた。

それが喜びの施主もいるだろう。

私には生活の場をテレビに放映されたい欲求はない。

 

興味深い話もたくさんあった。「預金通帳の隠し場所を作ってほしい」というクライアントや「太陽は感じたいけど全裸で過ごしたい」というクライアント。あるメーカーのショールームは有名な建築家が担当しているけど、実際の建物は下請けがが担当する、など。

土地の探し方や広さの目安は大変参考になった。土地は騙しがないそうだ。確かに建売は構造が見えるわけではないので価値を判断しづらい。

 

打ち合せの部屋にあった机は私も使っているものだった。好きなものの傾向は似ているのだと思う。でも経験上『うまくいかないんじゃないかな』という直感は大事にした方がいいと思っている。

 

おじさんに依頼したらプライドにかけていい建物を建ててくれるだろう。だけど、おじさんに依頼はしない。

 

たぶんおじさんも「俺を選ばない奴はセンスがないし、用はない」と思っている。

注文住宅?

建売を三社(合計で5軒)見て感じたことは、どこも「ここがこうだったらなぁ」と感じる点があるということだった。

物件Aはおしゃれだったけど収納が少なくて駐車場が狭い。物件Cはかっこよかったけど隣の家に手を伸ばせば届く距離で、家の裏は森だった。虫が苦手なのであまり森が近すぎるのは気になった。

 

注文住宅は建売より総合的に価格が上がるというのと、予算の全体像が分かりにくくなりローンが複雑になるのが怖い。

最も低いラインの建売は1500万円くらいから建てられるが、工務店に頼むとそうはいかない。

 

それでも理想通りの家が手に入るのなら検討する価値はあるかもしれない。

「分からない」というだけの理由で避けるのはもったいない気がしていた。

 

長く住むつもりなら「もっとこうだったらいいのに」という材料は少ないに越したことはない。

 

幸いこの時代はネットで調べればたくさんの情報が手に入る。

インターネットで調べることから初めてみた。

内覧 物件C

この不動産屋は対応がよかった。問い合わせた翌日には紙資料と担当者のメッセージが書かれた紙と似たおすすめの物件などのファイリングされた資料が届いて、後日丁寧なメールも届いた。

地元密着型の不動産屋で、難点は今の家から遠いという点だけだった。

メールにカーナビに入力する住所が書かれていたり、駐車場の情報なども書かれていて気遣いの出来るプロという感じ。

ただ残念なことにメールでやり取りした担当者は家庭の事情の急用で会うことはできず当日は代わりの担当者が当たることになった。

この代わりの担当者もかなり出来る人で代打としての仕事に徹してくれたので、もし近隣にこの不動産屋があったらもっと頼っていただろう。

きちんと順序立ててローンの説明やアドバイスをしてくれて、ハザードマップと街の資料も合わせて見せてくれた。

 

物件Cは男らしい内装でやり過ぎない程度にカッコよく素敵だった。物件Aとは方向性が違うものの、同じくらい惹かれる物件だった。

近くに新撰組の一人の資料館があり、もしその人物に親しみがあったら即決していたかもしれない。

 

問題は遠いし、交通の便もあまり良くない。

この点は夫が難色を示したので候補には残らなかった。