いよいよ引き渡し

引き渡し日はローンの結果が出てから2ヶ月後だった。4月の引越し繁忙期にかからないようにという売主の思惑もあったようだった。

2ヶ月間、本当に引っ越せるのかな?という気持ちで過ごしていた。

それでも賃貸のアパートは引き払う手続きをしなくちゃいけないし、勤務先にも伝えなくちゃいけない。引っ越してから手続きをするというわけにもいかない。

 

売主は引き渡しの前日に引っ越したそうだ。わたしたちは掃除もしたいし少し余裕を持って引っ越そうと考えていたけど、結局引越し屋のスケジュールがあいている引渡し日の翌日に引っ越すことになった。

仏滅だ。

(引越し屋のサイトに書かれていたから確認しただけで、特に気にはならない。でもスケジュールがあいていたのだから他の人は気にするのかもしれない)

ご近所に挨拶に行った時の「え? もう?」という反応、それはそうだろう。昨日引っ越していった家にすぐに引っ越してくるなんて。

 

司法書士と不動産屋、そして初めて売主に会った。書類の説明やサインはなぜか毎回喫茶店だった。不動産屋は隣県にあり、こちらに合わせるためにそうしてくれたのだろうか?喫茶店になんだか申し訳ない気がしたけど、他にも仕事の打ち合わせや商談しているような席があった。

どんな服がいいか分からないのでワンピースを着て行った。不動産屋や司法書士は当然スーツで、夫もスーツを着ていたが売主だけTシャツだった。

何か聞いておきたいことはありますか?と聞かれて資源ゴミについて聞いた。資源ゴミの曜日はネットには公開されていなかった。持ち去りを防止するためだという。

「水曜日です。分別は結構ゆるくて、ちょっとでも汚れてたら燃えるゴミにだしちゃっていいです。あとゴミ当番が回って来たら夜とかにやっちゃっていいです」

朗らかに話す売主はラフだった。友達が多そうだ。

そしてのちに分かったけど資源ゴミは木曜日だった。

 

不動産屋は「いい時期に買われたと思います」と言った。建築業界で話題になっている建築資材が輸入出来ない、いわゆるウッドショックの影響が不動産屋業界にも出ているようだった。これから新築を建てられるのがいつになるか分からなくなり、中古の物件の値段が上がっていくのではないか、ということだった。

 

とにかく引き渡しは無事に終わった。

本当によかった。

今日から持家がある。

中古の注文住宅

注文住宅のいいところは、こだわって建てられるところだと思う。

 

多くの人に必要なくても自分に必要なものがあったらいいし、逆に一般的に必要でも自分に必要ないものもある。

私の場合はパソコン用のスペースをリビング近くにほしいのだけど、これについては昨今のテレワーク環境からそれなりに需要があって建売でもちょこちょこ見かけるようになった。玄関近くに手洗い場がほしいというのも今ではあまり珍しくない。コロナ発生前から物件を見ていると、建売でも柔軟に世の中に対応している会社があるなと感じる。ただ個人的には必要な環境なので助かるけど、収束したあとも使う人たちがどの程度いるのかは気になる。

 

中古の注文住宅をいくつか見ると施主さんの個性が出ている。それを見るのは楽しい。でも長く住めるかというとまた別問題だ。

 

玄関から廊下の脇には座れる高さの造作収納がズラリと並んでいて、その上のスペースは長いガラス窓、という家があった。

施主のこだわったポイントだと書かれていたコンクリート造の風呂場はなんだかデコボコしていて薄暗く少しホラーに見えた家もあった。

30畳以上の2階リビングに続く階段が螺旋階段で、(家電の搬入が大変そうだ)小さな暗室があり、一階の部屋のど真ん中に造作本棚がある家もあった。

ドラマに出てくるようなシャンデリアと螺旋階段つきの玄関ホールがある家も見かけた。

そういう施主の要望に沿った家は好みが合致すれば自分で建てるよりお買い得だと思う。

 

実際家を建てた友人の話を聞くとかなり大変そうで、決めることが多くて終盤はヘトヘトになりあとで「もっとこうすればよかった」と考えたりしている。

 

たとえば、私は庭はいらないと思っている。きれいに咲いた花や季節に実がなる木に魅力は感じるものの、自分で育てたいかというとNoだ。

実家に庭はあったけど出たのは数回で、虫や雑草との戦いは性に合わない。

新しい家には庭がなかった。この点は好みと合致している。

 

リビング〜ダイニング〜キッチンの床は全て無垢材だ。この点は好みではない。経年劣化は楽しめない方なので、丈夫でメンテナンスに手がかからない方がいい。

 

点在する窓の形が横長の長方形。これは好みだ。シンプルな黒縁が額縁みたいで、窓から見える空を絵みたいに楽しめる。

 

インターホンの位置。これは絶対におかしい。ドアを開けるとインターホンを鳴らした人を開いたドアで閉じ込める形になり、ドアを開けた人はドア向こうを覗き込まなくてはいけない。ドアをスマートドアに取り替える案が出た時に開き方を逆にすることも検討したけど、ドアの開き方は動線的に正しいのでそのままになった。(インターホンの位置を変えたいけど、中古とは言えまだ新しい家の配線を無駄にするのもなかなかもったいない)

 

先にあげたテレワークスペースや玄関の手洗いスペースはまだないので、おいおい考えていこうと思う。

ただ配管図や家の仕様を書かれたものはほとんどもらうことは出来なかったため、すべて手探りで暮らしていくことになった。

内装も駐車スペースも気に入っているし、アンテナ工事や二重窓施工の見積もりに来てもらった業者さんには「いい作りだ」と言ってもらえたので、内部も大丈夫だと思いたい。

本審査

仮審査が通ったあとにいろいろと調べて不安になってきた。

『ネット銀行は本審査に時間がかかるし、対応も遅く悪い』

『ネット銀行は仮審査はすぐに通るけど本審査は厳しい』

『クレジットカードをたくさん持っていると本審査に響く』

『クレジットカードのキャッシング枠は解除した方がいい』

などなど。

不安に思った時は不動産屋の担当者がひとつひとつ回答してくれた。

 

「住宅ローンの審査は、個人でやるものと不動産屋を通してやるものは全く違う性質のもので、不動産屋は物件の資産価値を先に提示出来るので個人でやるよりも精度が高いんです」

「クレジットカードの枚数が多いことは特に影響しません」

 

また、揃える書類をリスト化してくれてどこで入手するかまで書き添えてありとても助かった。ネット銀行は窓口がないため、書類が足りないと審査期間がのびる、書類集めがとにかく大変という体験談を多く読んだ。

 

本審査前に契約があり、不動産屋からは「○○様のようなお客様にご購入いただけるということで売主様も喜ばれておりました」というメールが届いたけど、これで本審査が通らなかったらどうしよう…という思いの方が強かった。

 

不動産屋が作成した予定表はそれなりに余裕を持って立てられていたものだと思う。契約から3週間ちょっとまでに審査がおりなければ白紙契約というものだ。属性がいい人は本審査申し込み後数日で結果が出ると言うが、我が家は属性がいいとは言えない。

出来る限り早く申し込み、なんとも言えない気持ちで連絡を待ち続けた。楽しかったインテリア選びや部屋の妄想も気が気じゃなくなるためできるだけ考えないようにした。ネットで『銀行 本審査』で検索をかけて体験談を読んでみたり、時には突然死にたくなったりした。なんだかこれまでの人生を審査されているような気持ちになるのだ。

 

そんなふうに過ごしていたら2週間経ってようやく連絡が来た。

内容は『書類が足りない』とのことだった。そしてやはり少し特殊な属性のため行内で稟議が必要との事だった。(稟議って半沢直樹でしか聞いたことがないのでちょっとビックリした)

 

土日を抜いたら白紙契約になるまで4日の夜の事だ。翌日の午前中に書類を揃えて速達で送ったとしても残り2日。このスケジュールでは到底間に合わない。ただこの審査結果が出ていないというケースでは契約白紙は当てはまらず不動産屋が売主に事情を説明して承諾を得てくれたため、猶予がもらえることになった。

 

また審査結果を待つ日々が始まった。

 

時間がかかった上に本審査に落ちてしまったら売主のスケジュールにも支障が出てしまう。

でもいくらネットで検索したとしても結局は個々のケースによるので安心は出来ないし、銀行の判断を信じて待つしかなかった。

あまり頻繁に住宅ローン審査をするのもよくないと聞くし、もしダメだったらまた1年後とかに再チャレンジするしかない。

 

書類を送付して3週間後、契約からはちょうど一ヶ月たって本審査承認の書類が届いた。

もっとかかるかもしれない、ダメかもしれない、と思っていた矢先だった。ダメでも落ち込まない心の準備もしていたところだったので安心半分、本当に通ったんだ…という気持ち半分。

ネットで検索すると楽天銀行の住宅ローンは厳しい、通らない、という書き込みを見かける。大丈夫、属性に不安があっても通してくれる人はいるよ、と伝えたいけどあまり詳しく書けないのがもどかしい。

「本審査、通ってよかったですね」

楽天銀行で実行するのは初めてです」

と不動産屋に言われたので、やっぱり五分五分だったのかもしれない。

住宅ローンの事前審査

我が家は住宅ローンが通りにくい属性だと思う。

・自営業扱いであること

・ある程度の危険を伴う職業であること

・体力勝負な職種であること

・歩合制なこと

 

それでも一応付き合いのある銀行があるということ、審査の通してくれそうなネット銀行があることが救いだった。

このあたりは不動産屋が本当に心強かった。似た境遇の人が通りやすい銀行も知っていた。

 

事前審査は合格発表を待つような緊張感があった。結果が出る前に事前審査を持ってる人が現れたら?現金一括で払える人が現れたら?そもそも審査に通らなかったら?

気を揉んでも結果は変わらないとはいえ、結果が出るまでの日々はなんだか落ち着かなかった。

 

あの家だったらここはこうしようかな?あそこはどうしよう?でもそんなことを考えてダメだったらむなしいな、でもこの家電は合うだろうな、なんて考えたりした。

 

一番早く結果が出たのは楽天銀行だった。最後に出したにも関わらず最短での結果、しかも満額、最低金利での事前審査突破だった。

本当にホッとした。

 

銀行とのやり取りをすべて不動産屋が担ってくれたのも助かった。調べたところによると楽天銀行は確認事項は全て電話(しかもなんだか頻繁にかかってくるとか、電話でのやり取りは評判が良くないというレビューを見かけた)、書類は自分で調べながら揃えなければならないとのことで、もし自分で手続きをしていたら相当参っていたと思う。

 

事前審査が通ったら買おうね、と言っていたロボット掃除機も買った。しばらくして調べてみたら、「ネット銀行は事前審査が通りやすく、本審査で落とされることも珍しくない」「ネット銀行の審査は厳しい」という記事を何件も見た。

どうやら普通の銀行と違い、ネット銀行の事前審査は軽く調べる程度らしい。他の銀行と並行して本審査をすすめる記事が何件か出てきた。うちは楽天銀行のみの本審査申し込みで、もしダメだったら自己資金をギリギリまで増やして付き合いのある銀行にお願いするか、諦めるかの2択になる。途端に不安になってきた。

物件を決めた

建売や土地なども見せてもらいながら、問い合わせるか迷った物件があった。予算的にはギリギリ上限ラインで、前述の不動産屋が提案した○○駅周辺の中古の物件だ。夫は隣県への興味が高まっていたので、反応を見てから問い合わせようと考えていた。

仕事から帰ってきた夫に見せてみると意外にも「いいんじゃない?」というので、最短で見に行ける日に内覧を申し込んだ。居住中ということで土日しか予約出来ないようだった。事前に電話で探している条件やプロフィールの確認があった。駅から歩ける距離で駐車スペースも広くて物件までの道幅にもゆとりがあり、バス停やポストも近いけど騒音や排ガスは届かない距離でかなりの築浅。

ここまでの好条件だと売却理由が気になるけど、ご両親のために実家に帰らなくてはならないというものだった。

 

売主が新居のために用意した家具や全室についているエアコンなどは置いていくという。譲渡可能な家具の総額は三桁万円を超えるそうだった。ここまで行くとなんだか不思議な感じだが、新居のために用意したものはほとんど必要なくなるのでどちらにしろ処分するのだろう。

実際に見に行ってみたら思った以上によかった。施主の旦那さんの趣味なのだろう、かっこいい外構、かっこいい内装、高い天井とシンプルな窓、こだわったドア、そしてちょっとだけかわいいキッチン。(キッチンはたぶん奥様の趣味なのだろう)譲る家具一覧にTV(要確認)とあったのは気になった。

居住中の物件の内覧は初めてで、服が入っているクローゼットをガンガン開けていく不動産屋を見ながら不思議な気持ちになった。当日売主は不在だったので、二人の不動産屋が案内してくれた。

全体的にきれいで、モデルハウスに少しだけ生活感をプラスしたみたいな暮らし方だった。そしてダイニングにある高そうなテーブルで詳細な話を聞くことになった。

 

案内をしてくれた不動産屋のうちの一人は3年前くらいに売主に売却した担当者だという。気遣いのできるトークで限られた時間内にこちらに必要な情報を伝えようとしているのが分かった。余談だけど、内覧の時にハザードマップを用意してくれた不動産屋はここともうひとつだけで、どちらも好感が持てると感じた不動産屋だった。こちらの不動産屋はそれに加えて近隣に杉が多いか(花粉症の人のためだろう)、競輪施設や商業施設があるかなどの情報もあり、細やかな気遣いが感じられた。

何より売主が購入した時の不動産屋に任せたいと考えたのは悪くないと感じた。買った時に信用出来ないと思っていたら別の不動産屋に頼むだろうと思ったからだ。

 

ところでsuumoに掲載されている新築物件は大体複数社が情報を載せている。「地名  ○○万円」で検索すると他社が撮った違うアングルの写真も見られるし、運がよければ売主を見つけることも出来る。売主に直接連絡が取れれば仲介手数料は不要だし、他に販売した物件の評判も分かるのでオススメだ。

中古物件は新築とは事情が違うようで、一社しか扱っていなかった。つまり売主ではないけど担当する会社が明確に決まっている。これは意外と重要だった。先に他社から内覧を申し込んで事前審査待ちという人がいたけど、担当する会社で申し込めば優先度は高くなるのだ。

 

良い物件はすぐになくなる。内装や外構が良くてしばらくネットに掲載されている物件は何かしらの事情がある場合がほとんどだ。時間に余裕がある場合はグーグルマップから場所を特定してから見に行くのをオススメする。不動産屋は住所を明記しないことがほとんどだけど、外観の写真や近隣情報から特定はできる。(ただし結構大変なので根気がいる)グーグルマップは小さい道路でなければストリートビューで数年前までの写真を確認出来るので、その土地が以前家だったのか畑だったのか、林だったのか駐車場だったのか、いつ更地になったのかまで確認出来ることが多い。地盤や治安を気にするならこのあたりはある程度気になる部分だ。それに、周辺の道路の広さや雰囲気も見に行く前に確認出来る。

実際に確認したなかなか売れない事情がある物件はガソリンスタンドや鉄塔や川の真横だったり、資材置き場が近かったりした。しかも担当している不動産屋の写真はこういうのを巧みに写さないようにしていることが多い。

 

今回は掲載後間もなく、先に物件を見たのは2組、そのうち1組が事前審査待ち、後から聞くと私達の他に合計3組が事前審査を検討していた。不動産屋はハッキリとは言わなかったけど今申し込めば間に合うのだと感じた。

 

他に用意した物件を見せてくれるというので移動中の車内で夫に感想を聞いたところ、今まで見た中で一番気に入った、あそこに住みたいというので、事前審査をお願いすることにした。

不動産屋のいう「他に○件の方が検討中で〜」というのは方便も含まれると考えているけど、重要なのは物件を気に入ったか、その価格を出してもほしいかというところだったので特に問題はなかった。それに同じエリアで同じ家を建てたらその価格で買うことは難しいだろうと思った。

 

この段階になると事前審査を早く通せる人が有利になる。だが担当する不動産会社を通したことが功を奏した。こちらを一番手として扱ってくれるということだった。

結局どした?

土地を探そう→なかなかいい土地がない→建売も探そう→いい条件の家が見つからない→やっぱり土地も探そう

のループをグルグルしながらネットを徘徊する毎日。不動産屋に問い合わせると連絡のやり取りと内覧の管理で手一杯になってしまう。やり取りの上で不安がある不動産屋はその時点でお断りをした。問い合わせた数分後に電話してきて「お客さんの名前なんだっけ?」と電話口で確認する声が聞こえたこともあった。しかも電話ではなくメールでお願いしますと書いた物件だった。

名前を間違える不動産屋や、メールで「!」や顔文字を多用する不動産屋に不安を覚えたりもした。前の記事を読み返して名前を間違える不動産屋や口調に不安を覚えるは前にもいたな、と思い出した。接客業にとって大事なことに思えるけど、どうなんだろう。

そんな感じで、お任せしたい、お任せしても大丈夫だと思う不動産屋を探すのも大変だった。 

(それと、ものすごく些細なことだけど不動産屋はメールを返信ボタンで返してくれる人が少ない。返信ボタンで返してくれると同じ話題のメールはひとまとめに表示されるのだが、毎回新規メールで返されるとあとでメールを探し出すのに苦労する)

 

そんななか中古物件も探し始めた。よくある建売を買うよりも注文住宅の中古物件の方が合うこともある。(ただし施主の考え方が合わないと大きな齟齬もある)

ひとつ目にいいなと思った物件は問い合わせたあとに駐車スペースが小型車ギリギリということが分かり、見に行く前に断念した。夫は関東圏から四国や九州まで運転しても苦にはならないという車好きだ。しかも少し大きいサイズのSUVに乗っている。周辺の道が狭いと日常生活がストレスになるし、バイクも手放せないことを考えるとできれば駐車スペースは1.5台分並列で。この条件は近隣で予算内だとかなり厳しいということが分かってきた。少し離れた県で土地が広くて駐車スペースに余裕があったとしても、そこにたどり着くまでの道が狭かったり、旗竿地だったりして意外とそこがネックになった。

 

次に見つけたのは近所の注文住宅で、高級車が三台停まっている写真から駐車スペースは十分、夫婦二人しか住んでなかったであろう割りきった間取りの物件だった。

こちらも問い合わせたが、次の日には物件情報から消えていた。たぶん成約したのだろう。

だから不動産屋も急いで連絡しなくていいやと思ったのか、次の日午前中の電話に出られなかったら数日後に「あの物件もう申込入っちゃいました」という電話が来たというノンビリぶりだった。

 

ところがこの不動産屋が色々と条件などを聞いたあとポツリと「○○駅周辺がいいんじゃないかなと思います」と言い出した。昔担当していたエリアで、近く路線が拡大してこれから便利になり地価も上がるのではないかと言う。出張が多い夫は飛行機や新幹線へのアクセスも重視していた。隣の市だったが、今まで馴染のない地名だ。

その不動産屋からその電話以降の連絡はしばらくなかった。自分のエリア外の情報だけくれるなんて妖精か?

単に商売相手にならないと思われただけかもしれない。

 

ひとまずそのあたりでも探してみようということになった。

 

持ち家って必要?

妹は貯金が趣味だという。

「それなりの額を貯金出来ているけど、家を買う気にはなれない」とのことだ。

 

私も迷っていた。

 

何かあった時すぐに引っ越す決断が出来る賃貸と、ローンを払い終えれば手元に土地が残る持ち家。

 

個人的に資産は手元に残らなくてもいいと考えている。祖父や祖母の代での相続の複雑な思惑を見ていると財産なんて自分たちの世代で使いきってしまえばいいのに、とさえ思う。

 

家を持つということは家を借りるよりリスクや責任も増えるし、払い続けなければいけないという義務も発生する。安い家賃でそれなりの家に住んで、娯楽にお金をかけるのも一つの楽しみ方だと思っていた時期もあった。

 

それでも家を買おうという決断をしたのは子供がいないということ、もう一つは音の問題だ。子供がいない生活は気楽だ。でもそれなら他にお金がかけられる。何か自分たちのために作ろう、と思った。それと夜中に笑う隣人や夜中にドアを開け閉めする隣人、屋根が飛んだ家と隣の古い家を壊す音、新築を建てる音が積み重なってストレスだったからだと思う。

なにより夫が家がほしいと言ったこと。あの家を買ったらあれをしよう、ここはどうしようかと目を輝かせて話す夫を見て、この人の願いが叶うといい、と思ったことが大きな理由の一つだと思う。それまでは何度もこのままでもいいんじゃないかと思い直したりした。

 

今回、家をいちから建てることはないかもしれないけど、今よりも楽しい家に住めるといいなと思う。